
紅茶の基礎知識

紅茶は、緑茶や中国茶などと同じ「カメリアシネンシス」という学名のツバキ科の茶の樹からできています。この茶の樹の葉には酸化酵素が含まれていて、茶葉を揉んだりする際に酸化発酵の働きが進んでいき、茶葉の色や香りが変化するのですが、これを十分に行い完全に発酵したものを紅茶と呼びます。
紅茶にはダージリンやアッサム、セイロンなどの種類がありますが、これは生産地の名前がつけられています。生産地によって気候や土壌が違い、栽培方法・製造過程も異なるので、それぞれの味わいや香りといった風味を愉しめます。
紅茶の製法
摘採された茶葉が工場に集められると、すぐに加工が始まります。紅茶の製法には、伝統的な「オーソドックス製法」と近代的な「CTC製法」があります。
【オーソドックス製法】
オーソドックス製法は伝統的な製茶工程で、さまざまなグレードの茶葉を生産できます。この製法は以下の工程に分けられます。
1.萎凋(いちょう)
萎凋とは生葉を萎れさせる工程です。
萎凋棚に生葉を広げ、8~12時間ほどかけて水分を取り除きます。約30%の水分を失った生葉は萎れてしなやかになり、次の揉捻工程で作業がしやすくなります。
2.揉捻(じゅうねん)
揉捻とは茶葉の細胞壁を破壊し、茶汁と酸素を接触させる工程です。
圧力をかけて茶葉を撚り、絞り出された茶汁に含まれている酸化酵素が酸素に触れ、酸化発酵がはじまります。
3.発酵
揉捻で絞りだされた酸化酵素が空気中の酸素に反応して葉の色が変わり、紅茶独特のアロマが生まれます。
発酵中に茶葉は暗褐色または黒色に変色します。発酵することで苦味物質が減少するため、この工程によって紅茶の品質が左右されると言えます。
4.乾燥
酸化を停止させた状態で保存するため、茶葉を85~88℃の熱風で乾燥させます。葉汁が茶葉の上で乾燥すると、生産工程が終了。
沸騰したお湯をこの茶葉に注ぐと、乾燥した葉汁がお湯に溶け出して、銅褐色の香り豊かな爽やかな飲み物が出来上がります。
5.区分け/ソーティング
最後に、茶葉は揺動ふるいを通過して、さまざまなグレードに分類されていきます。
収穫するごとに、茶葉からブロークン、ファニングス、ダストのさまざまなグレードの紅茶が生産されますが、茶葉の等級は収穫された生葉の品質とは何ら関係がありません。
砕いた茶葉(ファニングスとダスト)は大きい茶葉に比べて、平均2~3倍のお茶を入れることができるため、主にティーバッグ用ブレンドに使用されます。
【CTC製法】
CTC製法は均一なサイズで短時間発酵し、抽出効率の良い茶葉を生産するための時短製法です。表面に細かい刃を付けた大きなローラーを持つ機械でリーフを巻き込み、引き裂きます。この機械で、ほとんどの茎や葉脈が取り除かれ、本来の葉部分だけが加工されます。CTCはCrush(押しつぶす)、Tear(引き裂く)、Curl(丸める)の頭文字です。
紅茶のグレードと分類

紅茶と言えば『オレンジ・ペコ』という言葉が浮かんでくる人が多いのではないでしょうか。この『オレンジ・ペコ』は紅茶のグレードを指す言葉で、茶の種類や銘柄を示しているのではありません。紅茶のグレードは、「茶葉の様子やブレンド具合」で表され、オレンジは「O」、ペコは「P」を記号として使います。
また、摘み取った茶葉をそのまま使う以外に細かく粉砕して使う場合もあります。これをブロークンタイプと呼び「B」を記号として使います。

【フルリーフ形状】
●ファイネスト・ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコ(FTGFOP)
ゴールデンチップと呼ばれる金色のうぶ毛の生えた新芽がたくさん入ったもので、収穫できる時期が限られているため珍重されます。
●フラワリー・オレンジ・ペコ(FOP)
新芽(チップ)とその下の若い葉を1枚だけ使います。くるりとカールした若葉の中にチップと呼ばれる新芽が含まれています。
●オレンジ・ペコ(OP)
1番良く知られている茶葉です。FOPよりも茶葉は若干大きめです。茶葉は縦にカールした針状になっています。チップはほとんど含みません。
●ペコ(P)
OPよりやや短く、茶葉は大きく厚みもあり、チップを含みません。
●ペコ・スーチョン(PS)
ペコの下にある葉です。茶葉は短く、厚みがあります。
●スーチョン(S)
枝基の葉。茶葉は大きく厚みがあります。中国の薫製茶に用いられます。
【ブロークン形状】
●フラワリー・ブロークン・オレンジ・ペコ(FBOP)
枝の先端にある1番若い葉(FOP)を細かくカットしたもので、チップを含みます。
●ゴールデン・ブロークン・オレンジ・ペコ(GBOP)
ゴールデンチップも含まれた、ブロークンタイプのOPです。
●ブロークン・オレンジ・ペコ(BOP)
茶葉を粉砕したブロークンタイプのOPです。
【ファニングス&ダスト形状】
●ブロークン・オレンジ・ペコ・ファニングス(BOPF)
BOPの製造時にふるい分けられた、より細かい形状の茶葉です。
●ファニングス(F)
BOPFよりさらに細かくふるい分けられたものです。D(ダスト)よりも茶葉は大きく、味が濃く出ます。
●ダスト(D)
最も細かい粉状の茶葉です。浸出時間が短く、主にティーバッグ用に使用されます。
紅茶の保存方法
常温保存で問題ないですが、できる限り密閉容器に移し替え、冷暗所に保存し、開封後は早めにお召し上がりください。湿気や匂いを吸いやすいので、冷蔵庫で保存する場合にはしっかり密閉するか、2重3重に封をするなどしてください。